先日、かつてキャプテンだったOBのI君に会った。
くせの強い学年だったが、それを抑え込むほどの強い意志と個性を持った立派なキャプテンだった。
しかしその向こうっ気の強さが災いして、高校でトラブルを起こし退部→退学というとても残念な結果になっていた。
その後の彼の様子の情報はほぼ入って来なかった。
高校を中退した若者のありがちなパターンだけが想像され、とても残念な気持ちになっていた。
先日のチャリティーオークションの際も彼は来なかった。当然と言えば当然だけどね。
そんな中での彼との偶然の再開。
それはグランドから帰った後、買い物に行った時だった。
顔を見た瞬間、お互い「あっ!」ってなった。向こうは「ヤバイのに会っちゃったな」って一瞬思ったかな?そんな感じの顔をしてた。
すぐさま首根っこ捕まえた。
「今、何してるんだよ」
「今、すか? 買い物っす。」
「んなこと聞いてねぇよ!」
そんなくだらない会話をした後、彼はこう言った。
「やってますよ、野球」
中退後、紹介があって彼のように学校を途中で辞めてしまった選手たちに野球を教える野球塾みたいな所に通っていると言う。
社会人クラブチームにも所属し、試合にも出ているそうだ。
野球塾には10代から30近い人間が通っているけど、彼はその中でも最年少なんだって。
元プロが教えてるから野球のレベルはすごく高い。実際にそこ出身でプロ野球選手も生まれてるんだそうだ。
そんな感じで彼自身も将来プロ野球になることを目指していると熱く語ってくれました。
しかしそんな会話の中でポツリとこんな事も言いました。
「でもやっぱり高校野球に戻りたいって思う事がありますよ。高校野球にはそこにしかないものがありますから」
レベルの高い野球をやっていて、野球選手として充実した日々を送っていても、周りはほとんど年上。
同級生と気の置けない会話を楽しみながら日々を過ごしたり、時にはぶつかりながら切磋琢磨し合う高校野球とは違うよね。
それは彼にとってもう手にすることは出来ないものなんだよね。
それが自分でやっちまった事の代償なんだろうけど、でもそれをまだやり直しが効くこの年齢で気付いたのは大きいよね。これからその失ったものを取り戻すために何を頑張れば良いか、考えられる訳なんだから。
そんな事を彼に言ってあげました。
彼の野球はまだ終わっていない。回り道したけど、きっと先に光が見えていると思う。
今度こそその光を手放さず掴み取って欲しい。
頑張ればI君!