2006年04月21日

負けたくないという気持ち

昨日の続きです。

今をさかのぼること4年前。

2002年4月14日。
我々は市長旗杯争奪春季大会の準決勝に臨んでいた。
1回戦は13対3。まさに絶好調とも言える状態。
相手は白地に緑のロゴの入ったRチーム。我がチームにとっては目の上のたんこぶとも言えるライバルチームだ。
相手も1回戦を16対1で破っている。お互いベストの状態。
低学年ではこの2チームが頭一つ抜けていると周囲に言われていた。
事実上の決勝戦という声が掛かることもあった。

そんな、これまでとはちょっと違った雰囲気で試合はスタートした。
マウンドにはまーぼ。
当時のまーぼは、球は速いがコントロールが最悪。
安定している時にはほとんどヒット打たれることなく完封勝利。
ダメなときには早めに違う投手に変えてピンチを切り抜ける。そんな試合運びを前年秋から繰り返していた。
低学年ながらビックイニングを作らせない安定感。大勝ちはしても大負けはしないという自信が指導者にはあった。

まーぼ以外には、現在もシニアで一緒にやっている、コントロール抜群の左腕O君、度胸満点のキャプテンS君がピッチャーをやっていた。
それでもまーぼがマウンドに上がり続けることがベスト。守備の陣形を考えてもそれが最上の選択だった。
しかしコントロールが安定するかは当日投げてみなければ分からない。

この日のまーぼはかなり安定している様に思われた。
ぽんぽんとストライクを入れていき打者を追い込んでいく。
ところが中軸バッターに連打を打たれ、初回2点を献上してしまった。
それでもあっさり後続を討ち取り、追加点を許さず反撃に備えた。

しかし我々に大きな誤算があった。
相手のRチームのエースF君がこの日絶好調。
まーぼと変わらない速球と、抜群のコントロールでまったく手も足もでないまま、1回裏の攻撃は終了した。

このF君。この日を境に卒団までずっとまーぼのライバルだった。
市内大会でも、県南大会でも、はては6年生の時に行われた、市内の小学生が集まる陸上競技会でも、ソフトボール投げで死闘を繰り広げている。(この時はわずか3センチの差でF君が1位、まーぼは2位だった)

話を試合に戻そう。
2回表、下位打線に入ったせいか、バッターはまーぼの球にタイミングが合わないまま攻撃を断ち切る。
攻撃を退け、あとは得点するだけなのだが、相変わらずF君が我々の前に立ちふさがった。

前の回と同じく3者凡退。
反撃の糸口も掴めないまま3回に突入した。

ここで得点を奪えない不安が出てしまったのか、先頭バッターにフォアボール。続くバッターはエラーで出塁と徐々にほころびを見せ始めてしまった。ヒットを打たれ1点を奪われてなおかつバッターボックスにはエースで4番のF君。
『ここで打たれたら・・・』そんな不安を抱えたまま投げたまーぼの球は真ん中に甘く入り、外野の頭を越えてしまう。
これで2点が入り、すでに5対0。しかし得点差ほど、まーぼは調子が悪いわけではないと判断した監督は続投を指示。
その期待にこたえ、なんとかこの回をここまでで抑えて反撃を目指した。

しかし、すでに選手の気持ちは切れ始めていた。
新チームが出来て半年、ここまで完全に抑え込まれたことがなかったから、意気消沈してしまっているようだ。
監督が檄を飛ばし、バッターボックスに送り込むものの結果は出ず。
選手の顔には明らかに諦めムードが漂い始めていた。

この気分が最悪の結果を招いてしまった。

続く4回。まーぼが突然崩れてしまった。連続フォアボールでランナーをためてしまう。ピッチャーのリズムが悪くなったのが野手にも影響し、今度はエラーが続出。途中、タイムを掛け、投手を交代し、大声を張り上げ、何をしてもまったく効果無し。次々に相手チームの選手がダイヤモンドを駆け回り、ホームベースを踏んでいく。

終わってみればこの回11失点。実に16点差をつけられてしまった。
その裏、意地で1点返すも、時すでに遅し。
4回コールドで敗れてしまった。

秋に新チームになってから半年で10数試合を経験し、2度目の敗戦。そして初めてのコールド負けだった。
ベンチも選手も茫然自失。まったく言葉もないままグラウンドをあとにして反省会に突入した。

こんな時に大きな声で叱ったところでしょうがない。
指導者は多くを語らず、選手の声に耳を傾けることにした。

選手の口から出るのは、皆同じだった。

くやしい くやしい くやしい くやしい くやしい くやしい くやしい くやしい くやしい

皆、目に涙を浮かべていた。これで2度目の涙。
1度目は新チーム結成間もない頃の初めての敗戦の時。
相手チームの、低学年とは思えない様な走塁、守備に手も足も出ず完敗した。
グラウンドから小学校に戻るまでの間、ずっと車の中で涙していた。

この日もなかなか泣きやむことは無かった。
しかし、目だけは前回と違った。
これならきっと立ち直れる、そう確信できるほど力強い目をしていた。

それは間違いではなかった。
翌週行われた3位決定戦では10対4で勝利。

そしてそれから2ヶ月後。市内の低学年リーグ戦が行われた。
予選は11対1、7対1と圧勝で勝ち上がり、決勝トーナメントに駒を進めた。

準決勝、両チームノーガードの打ち合いで、7対7でサドンデスに入った。
表は相手の攻撃。ここで1発長打が出てしまい、4点を奪われてしまった。
しかし、この日の選手達は違った。

『もう一度Rチームとやって、やり返してやるんだ』

大会が始まる前にみんなで誓い合った言葉を忘れていなかった。
なんとこの回4点を返して2度目のサドンデスへ。
ここで相手の攻撃を0に抑え、その裏に見事得点してサヨナラ勝ち。
見事決勝に駒を進めた。


決勝戦の相手は当然Rチーム。
だが、この時の気持ちは圧倒的に我々が勝っていた。

相手からすればわずか2ヶ月前にコールドで勝った相手。気持ちにゆとりがある。
いや、こちらからすれば、明らかになめている雰囲気が漂っていた。

かたや我がチームはここで勝つことを目指して、しかもただ勝つのではなくコールド勝ちをすることを考えて練習してきた。
その成果を出すときがようやくきたのだ。

そのメンタルの違いはいきなり初回から現れた。
表の相手の攻撃をまーぼが完全に抑え込む。この日のまーぼはこれまでになく力が入っている。球も今までより速い。
そしてその裏。前回完全に抑え込まれたF君をいきなり攻略。連打と走塁で崩していき、初回で5得点。

2回表の相手の攻撃もやはり守備の頑張りでシャットアウト。
そして攻撃はまったく手をゆるめず、4得点。

9対0として3回表。ここでちょっとまーぼに力みが出て、3点を許してしまうが、そんなものはこのあとの攻撃ですべて帳消しになった。

あの日に食らったような大量得点。打って走っての一方的な展開で、一挙に9得点。

ここで時間切れとなり、見事18対3で勝利した。
前回奪われた16点を上回る点を取ってやろうという指導者の言葉に選手が見事に答えてくれた。

この1戦から、いやあの敗戦から、まーぼ達は『負けたくない』という強い武器を身につけた。
これは学年に関係なくなかなか手に入れられるものでは無いと思う。

この武器を時に置き忘れたりしながら、ちょっとづつ階段を上っていった結果、最終年に最上の階段までたどりつけた。
県大会決勝という舞台を踏めたのは、あの日のコールド負けがあったからだった、そう思っている。

現在の我がチーム。特に低学年の選手は今回の負けをただの敗戦にしないで、栄光への第1歩にしてほしいなって心底思ってます。
その手助けは何でもしますからね。
posted by かに at 16:01| 埼玉 ☔| Comment(10) | TrackBack(0) | 少年野球 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする